後立山(長野/富山) 蓮華岳(2798.7m)、針ノ木岳(2820.7m) 2024年8月3日  カウント:画像読み出し不能

所要時間  0:51 扇沢市営第一駐車場−−0:57 登山口−−1:08 林道入口−−1:25 林道終点−−1:27 堰堤(梯子で越える)−−1:31 篭川にかかる橋(標高1620m付近)−−1:41 大沢小屋(休業中)−−2:02 河原(標高1800m付近)−−2:07 橋(標高1840付近)−−2:11 雪渓に乗る(標高1840m付近)−−2:18 秋道に乗る(標高1900m付近)−−2:31 雪渓に乗る(標高2010m付近)−−2:47 夏道に乗る(標高2150m付近)−−3:04 最終水場(標高2290m付近)−−3:33 針ノ木峠−−4:21 蓮華岳 4:30−−5:10 針ノ木峠−−5:55 針ノ木岳 6:30−−7:01 針ノ木峠−−7:17 最終水場(標高2290m付近)−−7:35 雪渓に乗る(標高2100m付近)−−7:48 夏道(標高1840m付近)−−7:50 橋(標高1840m付近)−−7:55 河原を離れる(標高1800m付近)−−8:13 大沢小屋−−8:24 篭川にかかる橋−−8:34 林道終点−−8:45 舗装された車道−−8:49 水浴び 8:54−−8:59 登山口−−9:03 扇沢市営第一駐車場

場所長野県大町市/富山県中新川郡立山町
年月日2024年8月3日(土) 日帰り
天候快晴。気温が高く風が無いと稜線でも暑かった!
山行種類一部残雪の一般登山
交通手段マイカー
駐車場扇沢駅直下の有料駐車場より下に市営無料駐車場あり。ただしハイシーズンには深夜に満車になるので注意
登山道の有無あり
籔の有無大沢小屋付近で笹のはみ出しあり。笹が濡れている時は雨具必携
危険個所の有無雪渓端は雪が薄くなっている可能性があるので注意が必要。針ノ木雪渓の残雪状況でルートが大きく変わり、これからは秋道の利用区間が長くなるはず。事前に情報収集してどこで雪渓/登山道の乗り換えが発生するか把握しておくこと
山頂の展望晴れれば大展望
GPSトラックログ
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コメント 梅雨明け後初めての好天予報の週末は蓮華岳、針ノ木岳に。無料の市営第一駐車場は金曜夜で既に9割程度埋まっていてびっくり。大沢小屋荷上げ道の笹がはみ出した区間を刈り払うべく鎌を持って行ったが、既に刈り払われていた。雪渓は下流の橋を渡ってすぐに出てくるが、少し歩いて右岸秋道が出ていたので往路は秋道を利用した(帰りは秋道は使わず雪渓を下った)。ノドで雪渓が終わるが暗闇で左岸秋道が分からなかったので沢を直登して秋道が右岸へ移ってから道を発見できた。その後は雪は無し。標高3000mの予想気温が+13℃と高温予想で防寒着はゴアだけにしたのは正解だった。例年だと高山植物の開花のピークだが、今年は既にピークは越えて数も種類も減り始めていた。今回はすれ違った登山者は100人近くいたと思われる


標高1850m付近から見上げた針ノ木雪渓。2箇所で大きく崩壊しているが、上部の崩壊地は右岸側がまだ繋がって雪の上を歩けた

見かけた花と開花状況

花の種類

場所 

開花状況 

キツネノボタン 扇沢〜林道 終わりに近い
ネバリノギラン 大沢小屋荷上げ道 花が咲いているのかよく分からない花
ガクアジサイ 大沢小屋荷上げ道 花盛り
オオバミゾホオズキ 大沢小屋荷上げ道 ほぼ終わり
ズダヤクシュ 大沢小屋荷上げ道〜針ノ木雪渓上端 ほぼ終わり
タマガワホトトギス 大沢小屋荷上げ道 1輪しか見なかった
クガイソウ 大沢小屋荷上げ道 1輪しか見なかった
ミヤマキンポウゲ 大沢小屋荷上げ道、針ノ木雪渓上端〜針ノ木峠 谷筋は花盛り
タテヤマウツボグサ 大沢小屋荷上げ道、標高1800m付近 終わりに近い
オニシモツケ 大沢小屋荷上げ道、標高1800m付近 河原は花盛り、他はほぼ終わり
ハクサンフウロ 大沢小屋荷上げ道、針ノ木峠 2株しか花を見ていないので不明
ミソガワソウ 大沢小屋荷上げ道、標高1820m付近 終わりに近い
ママコナ 大沢小屋荷上げ道 1輪しか見なかった
エゾシオガマ 大沢小屋荷上げ道、針ノ木雪渓上端〜針ノ木峠周辺 花盛り
オトギリソウ 大沢小屋荷上げ道、稜線 花盛り
シモツケソウ 大沢小屋荷上げ道、標高1800m付近 咲き始め
カンチコウゾリナ 大沢小屋荷上げ道、稜線 咲き始め
ミヤマアキノキリンソウ 大沢小屋荷上げ道、稜線 花盛り
キオン 大沢小屋荷上げ道 花盛り
ハクサンオミナエシ 標高1790m付近 花盛り
ヒヨドリソウ 大沢小屋荷上げ道〜標高1790m付近 花盛り
ヨツバヒヨドリ 大沢小屋荷上げ道〜標高1790m付近 花盛り
ニッコウキスゲ 針ノ木雪渓下部 ほぼ終わり
オオバギボウシ 針ノ木雪渓下部 花盛りだがピークは過ぎている
キンコウカ 針ノ木雪渓下部 咲き始め
オオコメツツジ 針ノ木雪渓下部 ほぼ終わり
ヤマハハコ 針ノ木雪渓下部〜稜線 花盛り
ニガナ 針ノ木雪渓下部〜稜線 花盛り
クルマユリ 針ノ木雪渓下部〜稜線 1輪しか見なかった
テガタチドリ 針ノ木雪渓下部、針ノ木岳直下 花盛り
ミヤマタネツケバナ 標高2100m付近 花盛り
モミジカラマツ 針ノ木雪渓上端〜針ノ木峠 咲き始め〜花盛り
ミヤマリンドウ 針ノ木雪渓上端、針ノ木峠〜針ノ木岳 花盛り
アオノツガザクラ 針ノ木雪渓上端、針ノ木峠〜針ノ木岳 終わりに近い
ミヤマダイモンジソウ 針ノ木雪渓上端〜針ノ木岳 花盛り
オオレイジソウ 標高2250m付近 花盛り
ナナカマド 針ノ木雪渓上部 花盛り
ヨツバシオガマ 針ノ木雪渓上端〜稜線 花盛り
ウサギギク 針ノ木雪渓上端〜稜線 花盛り
タカネヨモギ 針ノ木峠付近〜針ノ木岳 花盛り? 咲いているのか分かりにくい花
ミヤマホツツジ 針ノ木峠付近〜針ノ木岳 咲き始め〜花盛り
クロマメノキ 針ノ木峠付近 花盛り
ミヤマダイコンソウ 針ノ木峠付近〜稜線 終わりに近い
イワギキョウ 針ノ木峠付近〜稜線 花盛り
チシマギキョウ 針ノ木峠付近〜稜線 花盛り
ヒメクワガタ 針ノ木峠〜針ノ木岳 1株だけ見かけた
コマクサ 蓮華岳周辺 花盛り〜終わりかけ
タカネツメクサ  蓮華岳付近 花盛り
イワツメクサ  稜線 花盛り
コイワカガミ  稜線 ほぼ終わり
ハクサンシャクナゲ 稜線 ほぼ終わり
シラタマノキ 稜線 花盛り
ゴゼンタチバナ  稜線 花盛りだがピークは過ぎているかな
ベニバナイチゴ  稜線 ほぼ終わり
コケモモ  稜線 花盛り
キバナコマノツメ 稜線 1輪だけ見かけた
タカネヤハズハハコ 稜線 花盛り〜終わりかけ
ツマトリソウ 針ノ木岳付近 1輪だけ見かけた
マイヅルソウ 針ノ木岳付近 終わりに近い
ミヤマクワガタ  針ノ木岳付近 終わりに近い
ミネウスユキソウ 針ノ木岳付近 花盛り
イワオウギ  針ノ木岳付近 終わりかけ
イブキジャコウソウ 針ノ木岳付近 花盛り
シコタンソウ  針ノ木岳付近 ほぼ終わり
タカネシオガマ  針ノ木岳付近 花盛り
ミヤマミミナグサ 針ノ木岳付近 花盛り
ミヤマウイキョウ 針ノ木岳付近 花盛り
トウヤクリンドウ 針ノ木岳付近


市営第一駐車場は日付が変わる前に満車になった ゲートと登山口
林道入口 林道終点
ここでは初めて見たコバノイチヤクソウ 堰堤
登山道に合流
大沢小屋 篭川河原に出た
先人の足跡。光からして2人はいるはず
橋を渡って少しで雪渓に乗る 雪が切れたら往路では秋道に乗った
標高1970m付近。大岩根元に水が流れている 標高2000m付近で秋道が雪に埋もれて雪渓に乗る
ノドを越えて標高2150m付近で秋道に乗る 最終水場は豊富な水量だった
針ノ木峠 テントと針ノ木岳に向かう登山者の光
蓮華岳西の肩の祠 蓮華岳東の肩の三角点
東の空は背の高い雲海で志賀高原の山々も雲海に沈んでいた
蓮華岳から見た頚城山脈の山々
山頂標識 タカネツメクサ。蓮華岳直下だけで見られた
タカネシオガマ たぶんオンタデ。タデ科は見分けるのが難しい
ミヤマダイコンソウはしつこく咲き残っていた 2750m峰と2754m峰間はコマクサの大群落
コマクサはピークを過ぎていた タカネヤハズハハコ
コケモモ ウサギギク
シラタマノキ ハイマツの影のゴゼンタチバナ
萎れかけたコマクサ 針ノ木岳に朝日が当たる
雲海から日の出 ハクサンシャクナゲはほぼ終わり
針ノ木峠を見下ろす ミヤマホツツジ
針ノ木峠 毛が無いのでイワギキョウ
テント場。土曜早朝なのでまだテントは少ない オトギリソウ
ミヤマダイモンジソウ。雪渓上端からたくさん見られた タカネヨモギ
キバナノコマノツメ ミヤマダイコンソウ
ヨツバシオガマ アオノツガザクラ
ミヤマキンポウゲ。稜線では少数派 ミヤマダイコンソウのお花畑も今シーズン最後か
コイワカガミ 1ヵ月前に雪が残っていた場所
稜線に到着 イワツメクサ
ミヤマクワガタは最終盤 ツマトリソウはこの1輪のみ
針ノ木岳直下のマイヅルソウも最終盤 テガタチドリ
ミネウスユキソウ 針ノ木岳山頂
針ノ木岳から見た360度パノラマ展望(クリックで拡大)
針ノ木岳から見た南アルプス
針ノ木岳から見た八ヶ岳 針ノ木岳から見た富士山
針ノ木岳から見た槍穂 針ノ木岳から見た乗鞍岳。木曾御嶽が僅かに見えている
針ノ木岳から見た立山、剱岳 針ノ木岳から見た剱岳
タカネシオガマ 毛があるのでチシマギキョウ
ミヤマミミナグサだが花弁の切れ込みが少な目 イブキジャコウソウ
ミヤマウイキョウ イワオウギは終盤
トウヤクリンドウは芽を出していた ニガナの蕾
針ノ木岳から見た針ノ木雪渓。ノド付近は見えない 下山開始
ミヤマアキノキリンソウ。麓でも見られるほど広範囲にある ヒメクワガタ
葉からしてハクサンボウフウらしい。セリ科は難しい ベニバナイチゴ
ミヤマリンドウ チングルマは最終盤
クロマメノキ エゾシオガマ。上から見ると花が捻じれている
テント場を見下ろす 針ノ木峠から下山開始
峠直下のハクサンフウロ 下の方に10人近くの登りの人が見えている
モミジカラマツ。咲き始めが多いがたくさん見られた ミヤマキンポウゲ
最終水場 オオレイジソウ
ズダヤクシュ。まだ咲いているとは思わなかった ダケカンバ
標高2200m付近のチングルマ 標高2200m付近のアオノツガザクラ
標高2200m付近のミヤマリンドウ ミヤマキンポウゲとモミジカラマツのお花畑
標高2170m付近 ピンボケだがミヤマタネツケバナ
標高2160m付近が雪渓上端 雪渓に乗る。涼しい!
たくさんの人が上がってくる 標高2030m付近
上流の橋がかかる場所はまだ雪渓あり 橋がかかる場所近くまで右岸秋道が利用可能だった
標高1980m付近 標高1950m付近
標高1900m付近。一時的に雪渓が切れる
往路はここから秋道に乗った
標高1880m付近
雪渓末端から見た針ノ木雪渓 橋の近くが雪渓末端(標高1840m付近)
橋(標高1840m付近) 橋から見た針ノ木雪渓
篭川河原のテガタチドリ 篭川河原のミソガワソウ
篭川河原のオニシモツケ 篭川河原のクルマユリ
シモツケソウは咲き始め 斜面はオオバギボウシの白が目立った
タテヤマウツボグサはほぼ終わり オオコメツツジはほぼ終わり
アカモノの実 キンコウカは咲き始め
オオバギボウシ ニッコウキスゲは咲き残り
ヒヨドリソウ/ヨツバヒヨドリ。葉の付き方が異なる ハクサンオミナエシ
大沢小屋 荷上げ道の笹がはみ出した区間は刈り払いされていた
今年初のキオン。これを見ると秋を感じる 荷上げ道で初めて見たミヤマコウゾリナ
荷上げ道で初めて見たエゾシオガマ 荷上げ道で初めて見たママコナ
橋。先月より格段に水量が減っていた ミソガワソウ
今年もハクサンフウロが咲いていた 終わりかけのオニシモツケ
タテヤマウツボグサ 早くもトリカブトの蕾
荷上げ道のミヤマキンポウゲはほぼ終わり クガイソウ
タマガワホトトギス。1輪だけ見かけた 林道終点
オオバミゾホオズキ。かなり数が減っていた ガクアジサイ
新しい轍 ネバリノギラン
荷上げ道につながる林道入口 ここが夏場の水浴び場。冷たい水が大量に流れている
水浴び場に繋がる涸れた沢 キツネノボタンは終盤
登山口の登山相談所が設置されていた 有料駐車場はほぼ満車
扇沢駅近くに植えられたコバギボウシ。葉を含め全体的に小さい 市営第一駐車場到着。当然ながら満車のまま


 梅雨明け後の週末の天気はイマイチの状況が続いていたが、今週末は初めて土日とも好天予報。しかも広範囲で晴れて日中の雷雨の可能性はあっても基本線は晴れのままで、おそらく今年の夏山シーズンで最も入山者が多くなりそうだ。こうなると登山口駐車場の確保が問題になるが、私の場合は地元有利で混雑する前に登山口に到着できるので大丈夫。

 今回はかなりの高温が予想され(標高3000mの気温が+13℃)、雲もかからず日影の無い稜線では日が高くなるとかなりの暑さになることが予想された。そこで登山口の標高がかなり高いこと(標高1400m)、日影が無い長い稜線歩きを避けられる+涼しい雪渓歩きができる針ノ木岳と蓮華岳に決定した。

 金曜夜の扇沢の無料市営第一駐車場は既に9割が埋まっていて空きが非常に少なく、1ヵ月前とは大違い。登山口にできるだけ近い奥の方の駐車区画を確保。なお、日付が変わる頃には駐車場は満車になったようだ。

 今日はかなりの暑さが予想されるので山頂到着は日の出の時刻に設定。針ノ木岳/蓮華岳とも所要時間は約4時間なので午前1時前に出発。今の日の出は4時50分前後のはずだ。この時刻では駐車場に入ってくる車が目立つが、既に満車で駐車場を1周して出ていく様子が見られた。

 今回は防寒着を持たないため小さなナップザックとした。ただし6本爪軽アイゼンをもっているので重さ的には防寒着ありと変わらないだろう。でも体積が小さいのでザックが小さくて済み、ザック自身の重さが少なくて済む。

 登山口には今シーズン初めて仮設テントで登山相談所が開設されていた。夜中なので今は無人だが昼間は人が詰めるのだろう。いつものように大沢小屋荷上げ道で近道。林道終点から廃林道に入るとこのコースでは初めてコバノイチヤクソウを発見。なお、篭川にかかる橋周辺に生えているベニバナイチヤクソウは完全に終わって株は枯れていた。

 篭川の水量は先月は雨の直後だったのでかなり増水していたが、今回は通常程度まで減っていた。アルミ梯子の仮設橋の梯子には枯れた草木が引っかかっていて、増水の最大時にはここまで水量が上がったことが分かる。荷上げ道が左岸に移って笹のはみ出しが多い区間に入ると意外にも刈り払いされていた。ここ2年は全く刈られていなかったので、今回は私が刈るべく鎌を持ってきたのだが、これなら軽く刈るだけで済みそうだ。藪刈りは下山時にやることにして、往路では登山道との合流点に鎌をデポした。

 登山道に合流して大沢小屋を通過すると荷上げ道よりも笹のはみ出しが多いくらいだ。まあ、ここは以前からこんな状態だけど。今日は気温が高めの影響か、朝露は降りておらず笹が乾いていたので衣類が濡れることはなかった。でも最初から暑くて扇を取り出してパタパタ扇ぎながら歩いた。

 標高1800m付近で篭川河原に下りて、ここで支流の沢で喉を潤す。今回は雪解けが進んであちこちで水が得られるはずなので、ペットボトルの中身は空っぽのままだ。背の高い草が生えた河原を進んで最初の橋は既に架かっていた。ここから上流を見上げると前方に光が2つが見え、先行者は少なくとも2名はいるようだ。おそらく日帰りの扇沢馬蹄形周回組だろう。

 橋を渡って僅かに登ると雪が登場するが、まだ真っ暗でずっと先まで雪が続くのかライトの光では見えないのでアイゼン無しのままで残雪と無雪の境界を歩いていく。やがて残雪の幅が広がってしばらく続きそうな気配で軽アイゼンを装着。このままずっと雪渓を歩けるかと思いきや、標高1900m付近で雪が途切れた。昼間なら視界が得られて先の残雪の様子が見えるのでルート判断が容易であるが、今はまだ真っ暗な時間でライトの光では見える範囲が狭く、このまま無雪区間が続くのか判断できない。少しの間はアイゼンを履いたまま平坦区間を歩いたが、秋道が現れたのでアイゼンを脱いでこちらを歩くことに。秋道が雪に埋もれた時点で雪渓を歩けばいいだろう。すぐに右手に雪渓が現れたが、この先で途切れていないとは限らない。

 秋道の途中に見覚えのある大岩があり、ここで水が流れているので喉を潤す。まだまだ秋道は出ていて標高2000m付近まで秋道を辿ることができた。往路では暗くて分からなかったが、明るくなった復路で確認したら、ここは上流側の橋が架かる場所付近であった。橋が架かる場所にはまだ雪渓があったが、おそらく1,2週間後にはこの雪が消えて橋が架かり、左岸側の高巻道に移行するだろう。

 標高2000m付近で雪渓に乗る手前で最初の先行者を追い越す。どうやら私の方が雪上歩行に慣れていて歩行速度が速いようだ。幸いにして雪はノドを越えるまで続いてくれた。ノドを越えて傾斜が緩むと雪が消えるが、この付近の秋道は左岸の高い位置にあるはずであり、雪が消えた沢の近くにはまだ道は無いはずである。そこで雪が消えた沢の右岸沿いを適当に上がっていくと小さな雪渓が登場。沢側は雪解けが進んで雪面は2mくらいの高さで這い上がることはできないので、このまま沢沿いを進んだ。しかし最終的にはどこかで本流を渡って右岸へ上がる必要がある=雪の上に上がる必要があるとの判断で、這い上がれそうな段差が低い場所で雪の上に上がって岸に出ると秋道が登場。これでルートの心配がやっと無くなった。もうこれより上部では雪は無いのでアイゼンを脱いで目立つ大岩の陰にデポした。

 固い地面に乗れば歩きやすくなりスピードも上がるし、ルート判断が容易になるので気楽に歩ける。今回は特に荷物が軽量なので足が軽い。蓮華沢を越えてなおも上がって最終水場の標識のある枝沢で水を補給。今はかなりの水量があるが、ここは晩秋になると涸れてしまう。さらに進んで先行者の光が見えたがまだかなり先で、おそらく針ノ木峠直下位まで達していそうだった。

 赤茶けたガレ斜面をジグザグに上がって針ノ木峠に到着。まだ日の出まで1時間以上あるので真っ暗で、針ノ木小屋内の光が漏れていたが小屋の外に人の姿は無かった。ここで針ノ木岳に向かうか蓮華岳に向かうか考えたが、日の出まで時間があるのでより時間がかかる蓮華岳に向かうことにした。針ノ木峠から蓮華岳真での所要時間は約1時間で、今は午前3時半なので蓮華岳山頂到着は日の出前になりそうだ。

 峠から蓮華岳方向に少し上がってから振り返ると、テント場の光と針ノ木岳に向かう途中の登山者の光が4つ見えた。今の時刻を考えるとこの2人とも日の出前に山頂に到着するのではなかろうか。稜線の風はほとんど感じられず、半袖半ズボンのままでも寒さは感じない。逆に今の格好でちょうどいいくらいだ。

 一時的に傾斜が緩んで前方の稜線が見えるようになるが登山者の光は見えない。代わりに東の低い空には細い三日月が見えていて、予報通りに天気は良好で上空に雲はほとんど無いらしい。既に東の空は明るくなり始めていた。

 2754m峰への登りでハイマツ帯を抜けて石が重なった斜面を上がっていく。まだ暗いのでコマクサが咲き残っているかは分からない。2754m峰を越えてチングルマのお花畑に出るとほとんどチングルマは終わっていたが、ミヤマリンドウの蕾が見えていた。ハイマツの影にはまだゴゼンタチバナが咲いていて、本当にシーズンが長い花だ。

 2754m峰から2750mにかけてはコマクサの群落だが、まだ暗いためコマクサは見えなかった。帰りに確認しよう。2750m峰を越えて下って鞍部付近はまだミヤマダイコンソウが咲き残っていた。山頂への最後の登り斜面はタカネシオガマが見られる場所で、今年も姿を見せてくれた。イワツメクサ、タカネツメクサも。今回歩いたコースでタカネツメクサが見られたのはここだけであった。

 蓮華岳山頂西の肩の祠に到着。東の地平線はかなり明るくなってきたが、時刻は午前4時20分で日の出まで約30分あり、まだギリギリLEDライトが必要な時間帯だ。三角点がある山頂東の肩に到着。東の空は一面が背の高い雲海に覆われていて、浅間山らしい僅かな頭が見えている以外は全ての山が雲海に沈んでいた。残念ながらこれでは奥日光の山々は見えない。北東には雲海に浮かんだ妙高山、火打山、焼山が見えているが、雨飾山は雲海の下だ。南東には奥秩父に八ヶ岳、富士山、南アルプスと並んでいた。北アルプス方面は雲は全く絡んでおらず文句なしの展望だ。

 山頂では10分ほどの休憩。山頂では北西のやや冷たい風が吹き抜けて寒いため、ゴアの上下を着て毛糸の帽子、ネックウォーマー、軍手を着用。持ってきた防寒装備はこれで全てだが、ちょうどいい体感であった。日の出前の今が一番寒い時間帯のはずで、今回の装備はぴったりだったようだ。

 次は針ノ木岳に向かう。もうLEDライトは不要な明るさになっていた。西の肩に出ると2750m峰にかけての登山道が見えるようになるが、LEDライトの光が2つ見えている。おそらく針ノ木小屋宿泊者かテント泊者だろう。針ノ木峠までにすれ違ったのは5,6人だったような。私と同様に軽装で、あちらは私の装備を見て小屋泊まりだと思っただろうなぁ。

 明るくなったのでコマクサを探しながら歩くと、幸いにしてまだ咲いていたが萎れかけの株が多かった。比較的元気な株を選んで写真撮影。既にミヤマアキノキリンソウが数多く見られて花盛り。今年は花の季節の移り変わりが例年よりも早いようだ。今年初のシラタマノキの花はたくさん見られた。

 2754m峰を越えて下っていると午前4時50分頃に雲海から太陽が顔を出した。これから暑くなりそうで今回は麦藁帽子が大活躍しそうだ。標高を落として純粋なハイマツ帯からダケカンバ等が混じったハイマツ帯に入るとミヤマホツツジやエゾシオガマが見られるようになった。

 針ノ木峠に到着してゴアの上下を脱いで半袖半ズボンに変身して登りに備える。それにここからは東斜面で朝日がモロに当たるようになって余計に暑くなりそうだ。

 今は土曜早朝でテント場には6張のみ。おそらくこれから数がぐっと増えるだろう。今回は小屋から遠いテント場にはテントは一つも無かった。ここにはチングルマの群落があるが、大半は既に終わっていて一部だけが咲き残っていた。その中にはお目当てのミヤマリンドウの姿も見られた。

 岩場の北斜面をトラバースする区間の雪はすっかり消えていて、カールの底にも雪は全く無かった。もう8月だからなぁ。近くの登山道には人の姿は見えないが、稜線付近には人の姿があった。おそらくは小屋泊まりの大半の人は既に出発しているだろう。この時間帯にのんびり山頂を往復するのは今日下山する人だろう。

 トラバース区間は数年前は大お花畑だったが、今年もその姿は見られなかった。コバイケイソウではないが、大当たりの年が数年毎にやってくるのかも。今の主役はミヤマダイコンソウで、シナノキンバイは早くも姿を消していた。ミヤマキンポウゲは極僅かだけ。以前見た大お花畑はミヤマキンポウゲとシナノキンバイが主体であった。ベニバナイチゴはほぼおしまいで、ミヤマダイモンジソウが点在していた。

 1ヶ月前は残雪があった急斜面も今は夏道なので簡単に通過して稜線に出ると風が心地いい。残雪期には雪壁ができる場所も今は雪は影も形も残っていない。山頂が近付くとミヤマクワガタが登場。無論、昆虫ではなく高山植物の方だ。既に終盤で1つの株の半分以上の花は落ちてしまっていて、来週には完全に終わりかな。テガタチドリは今が花盛り。ハイマツの陰にはマイヅルソウが萎れかけてかろうじて残っていた。この花も今シーズンこれが最後かな。ミネウスユキソウは例年通りの場所にしっかりと出ていた。

 登り切って針ノ木岳山頂に到着。蓮華岳から1時間半で予定通り。今回はすっきり晴れ渡って360度の大展望が広がるが、相変わらず東の空の雲海は高いままで志賀高原の山々は見えないままで、奥日光も見えなかった。南アルプス方面は日の出の時間帯よりも良く見えるようになり、兎岳の右手に小さく尖った奥茶臼山が見えていた。

 土曜朝ということもあり山頂は比較的賑わっていた。これから赤沢岳方面に縦走に向かう人が半分以上で、ガレた登山道を下っていく姿が見える。残雪期だとやっかいな場所に最後まで雪が残って短距離のためにアイゼンが必要であるが、当然ながら今は全くの無雪だ。今日は好天で絶好の縦走日和と言えるが、逆に暑すぎて私にとっては種池までの縦走はきつすぎる。やるなら涼しくなった秋か、夏場なら曇って日差しが無いときの方がいい。今の脚力なら日帰り馬蹄形縦走も可能だろう。

 残るは下山のみなので山頂でしばし休憩。陽ざしが強いので麦藁帽子が活躍する。山頂からは針ノ木雪渓下部が見えるが、この距離では肉眼では人の姿は識別できない。山頂ではどんな花が咲いているのか入念に探索。イワオウギは終わりかけで、1ヶ月前に見られたシロウマオウギは影も形もなくなっていた。株が消えたとは思えず、より背の高いイワオウギ等に埋もれていると推測される。ミヤマシオガマは消えて代わりにタカネシオガマが咲いていた。イブキジャコウソウ、ミヤマミミナグサは前回は見られなかった花だ。シコタンソウはほぼ終わりだった。毛が生えたチシマギキョウやまだ芽が出ただけのトウヤクリンドウを見ると真夏というより秋の気配を感じる。

 休憩を終えて下山開始。まだ峠から登ってくる人がいるが、この時間帯だと私と同様に今朝扇沢を出発した人が大半だろう。トレランと思われる軽装の人も見られるが、今日の天気ならあれで大丈夫だろう。テント場のテントは減っているだけで、本日の幕営者は未着らしい。まあ、まだ午前7時だからなぁ。

 針ノ木峠から雪渓に向かって下山開始。赤いガレの下部には10人くらいの登山者が点々と見えている。これらの人が日の出直前にライト不要な明るさになってから出発した組だろう。狭い道ですれ違い場所に気を遣う。沢沿いの道に変わっても登りの人は続く。まだ谷筋は日陰で涼しいが、日が高くなって日差しが当たるようになると登りは地獄の暑さになるかな。稜線では冷たい風が吹き抜けて半袖では少し寒いくらいだったが、峠から下ると風が無くなってしまう。

 最終水場では休憩中の人がいたので、一段下の枝沢で水を飲む。ザックにはほとんど手を付けていないペットボトルがあるが、それを取り出すよりも沢水を掬って飲む方が手っ取り早い。

 蓮華沢を横断して大岩の陰に隠した軽アイゼンをピックアップし、なおも秋道を下っていく。この付近では標高2200mくらいなのに森林限界の稜線と同じくチングルマとアオノツガザクラ、ミヤマリンドウが咲く場所があった。少なくともミヤマリンドウに関しては私が見た中では最も標高が低い場所である。これも針ノ木雪渓が遅くまで残っている影響だろう。ミヤマキンポウゲは今が花盛りだった。モミジカラマツは咲き初め〜花盛り。ここでもまだミヤマダイモンジソウが多く見られた。

 標高2170m付近でノドの上部に達すると傾斜が緩んで短い距離の溶け残った雪渓が登場。往路ではこれを横断しないで雪渓に沿った沢を上がったのだったが、明るい時間帯ならば秋道の場所は一目瞭然だ。私の前にはへっぴり腰で下っている男性がいたが、傾斜が緩いのとスプーンカット化が進んで足元は平らに近いので、下りでもそれほどスリップに気を使う必要はない。おそらく残雪期はやらず夏山専門なのだろう。それを言うと多くの登山者がそうなのだが。

 ノドの傾斜が出てくる直前で雪渓上端に到着して軽アイゼンを装着。登りが多い中で軽快に下っていく。ここまで下ると谷間まで日が差し込むようになるので登りは暑そうだ(下りでも暑い)。見下ろすと登りの登山者の列が点々と続いている。今回はすれ違った合計人数は100名程度いたと見られ、今シーズンで一番多かった。梅雨がすっかり明けて夏山シーズン全開だからなぁ。

 往路では標高2000m付近の橋がかかる場所まで秋道を利用したが、明るい帰り道は雪渓の繋がり具合が先まで見えるのでそのまま雪渓を下ることにした。橋がかかる場所は今はまだ雪に覆われているが、1週間先にはどうなっているか分からない。完全に雪が消えるまではいかないだろうが、安全に雪渓を歩ける状態なのかは分からない。もし安全な通行が望めなくなれば橋が架かって左岸の高巻道に切り替わるだろう。

 往路では真っ暗な時間帯で雪の繋がり方が見えなかったため、余計なアイゼン脱着をやってしまったが、帰りはできるだけ長く雪の上を歩いて軽アイゼンを脱いだのは下流側の橋の直前であった。ここではこれから雪渓に取り付くためにアイゼン装着している登山者が多かった。

 橋を渡って河原を下っていくと森林限界の稜線で見られるテガタチドリ、クルマユリがこんな場所にも生えていた。花が開いたクルマユリを見たのは今シーズン初めてだ。ミソガワソウも今シーズン初だった。

 篭川河原から右岸高巻道に入ると斜面は一面のオオバギボウシだらけ。ただし花のピークは過ぎて萎れかけの花が多かった。1ヵ月前はニッコウキスゲだらけだったが完全に入れ替わっていた。ニッコウキスゲ、タテヤマウツボグサ、オオコメツツジはほぼ終わりで、キンコウカが咲き始めていた。

 樹林帯に入って日陰になりほっとするが、ここは東斜面で朝から日当たりがいいので気温は高めで汗が噴き出る。沢筋は冷たい風が吹き降りてきたが斜面ではそれはない。大沢小屋で荷上げ道に入るが、往路でデポした鎌を手にして刈り残した邪魔な笹や草を刈りながら進んだ。これで往路よりも体に触れる藪が減ってより歩きやすくなっただろう。

 荷上げ道では高山植物ではミヤマコウゾリナ、エゾシオガマ、ママコナ(ミヤマママコナ?)、ハクサンフウロ、ミヤマキンポウゲを見かけた。シモツケソウやオニシモツケは高山植物と呼んでいいのか微妙なところだ。橋を渡って堰堤を越えて林道終点に。帰りにコバノイチヤクソウを撮影しようと考えていたのにすっかり忘れてしまった。林道ではネバリノギランを初めて発見。本当にこの荷上げ道は高山植物が多く見られて驚かされる。

 舗装された車道に出ればゴールは近い。車道から登山道へ入る場所では登りの登山者がちょうど車道を横断するところだったが、私が車道から下ってきたので道路の反対側の登山道に入っていいのか少しの間迷ったようだったが、素直に登山道へ入っていった。夏山登山者では大沢小屋荷上げ道の存在を知る人は少数派だ。

 下りの登山道に入って次の車道に出る直前の今年できたばかりの涸れ沢を上流側へ向かっていつもの水浴び場へ。真夏に入って既に本流の水は涸れていたが、いつものように橋の袂から勢いよく冷たい水が流れ落ちているのでこれで水浴び。水温からして地表を流れてきた水とは思えず、おそらくこの近くで湧き出したものだろう。

 汗を流してさっぱりして登山道に復帰。登山口の登山相談所には人が詰めていて登山者と歓談中。例年だと開設は8月いっぱいくらいかな。

 扇沢駅前の有料駐車場は既に満車に近いようで、駐車場の入口でたむろする車が見られた。子供の夏休みに入ったことだし、これからの週末は悪天を除いて毎度こんな光景を目にするだろう。なお、車に乗り込んで車道を下っていったら、らいちょう駐車場でマイカー規制が始まっていた。これは扇沢の駐車場が満車になったときの対応で、麓の広いらいちょう駐車場にマイカーを置いてシャトルバスでピストン輸送するのだ。この光景も夏場の週末では当たり前である。

 市営第一駐車場も当然ながら満車。この時期は駐車場入口に交通整理の係員が立っていて、満車の際には駐車場に車を入れない措置を取っている。この下の第二駐車場入口には係員はいなかったが、路側まで駐車していたので満車だったと思う。

 着替えて軽く飯を食ってから車で出発。柏原新道周辺の駐車場も満車で、長いスノーシェッドを出た先の駐車スペースも満車で、その次のスノーシェッドを出たところも満車状態で、その先のスノーシェッドを出たところまで車が止めてあった。柏原新道は大賑わいだろう。まさに夏山シーズン真っ盛りだ。

 

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